多くの人工透析患者さんを悩ませている皮膚のかゆみ。
特に乾燥しやすい冬場には起きやすく人工透析の患者さんの多くに見られる合併症の1つです。
ここでは、人工透析の合併症によるかゆみについて、その原因と日常生活でできるかゆみ対策をご紹介します。
人工透析のかゆみが強くなると睡眠障害や日中の眠気など、仕事や日常生活に支障をきたす場合もあります。
「かゆみだから大丈夫」とあなどらず、しっかり対策を立てましょう。
人工透析の合併症である「かゆみ」は、透析をする患者さんの約7割が悩まされています。
中でも症状が強くなると、睡眠障害や日中の眠気、抑うつ感が見られ日常生活や仕事に支障をきたす場合も。
近年、人工透析の合併症によるかゆみの研究が進められ、治療方法が徐々に確立しています。
ここでは、人工透析の合併症におけるかゆみの原因についてみていきましょう。
人工透析の合併症で約7割も悩まされているのが、かゆみ。
さまざまな原因がありますが、その1つが「外因刺激によってかゆみの感受性が高まる」ことです。
たとえば、冬場は乾燥しやすくかゆみを伝達する神経が伸長するため、かゆみを感じやすくなります。
お風呂や就寝前後など体が温まるとかゆみが増すため、余計に掻きむしってしまう場合も。
透析を受けている患者さんは、リンの排出がうまくいかず二次性副甲状腺機能亢進症に陥り、骨から血液中にカルシウムが排出されます。
血液中のカルシウムやリンの濃度が高くなる、副甲状腺ホルモンの濃度が高くなることによりかゆみを引き起こすと考えられているのです。
そのほか通常の透析では取り除きづらい「β2-マイクログロブリン」という物質が、皮膚組織に沈着することで、かゆみを誘発するとも考えられています。
前述の通り、人工透析によるかゆみが強いと仕事や家事をはじめとした日常生活の質が下がり支障をきたす場合もあります。
かゆみだからとあなどらず、日常生活でできる「かゆみ対策」についても覚えておきましょう。
寒い冬だと熱めのお風呂に浸かりたいと考える方も多いかもしれません。
しかし、熱めのお風呂ですと肌が乾燥しやすくかゆみを誘発します。
できるだけ、39〜40℃のぬるめのお湯で長湯は避けて入浴しましょう。
また、入浴時にかゆみがあるからとゴシゴシと石鹸で体を擦りがちですが、余計にかゆみを招く要因です。
かゆみを誘発しやすい石鹸の使用はできるだけ少量にし、柔らかいスポンジやタオルで優しく洗うことをおすすめします。
お風呂上がりは皮膚が乾燥しやすいため、できるだけ早く保湿剤などで皮膚が乾燥しないように対策をしてください。乾燥を防ぐためには、油分を補うと良いでしょう。
乾燥はかゆみに直結しますから、乾燥させないことが第一です。
そのほか、身につける肌着も皮膚への刺激が少ない木綿や絹製品など肌に優しいタイプを着用してください。
前述の通り人工透析による肌のかゆみは、皮膚を乾燥から守ることが重要です。
そのためには、就寝後室内の湿度が低い場合には加湿を心がけましょう。
特に冬場は、空気が乾燥しやすくかゆみが出やすい時期でもあります。加湿器を使用するか、加湿器がない場合にはハンガーに濡れたタオルを吊すなどの対策が効果的。
寒い冬だと就寝後に電気毛布やカイロなどを使いたくなりますが、熱さによってかゆみが誘発されやすいためできるだけ避けましょう。
人工透析合併症のかゆみは、実に約7割の患者さんが悩まされています。
外因刺激によって引き起こるかゆみの場合には、本記事でもご紹介した通り、日常生活を少し見直すだけでもかゆみ対策に有効です。
また、慢性腎不全に由来するかゆみの場合には、尿毒症性物質を効率良く除去できる透析方法や透析膜の改良、さらにはカルシウムやリンの管理などで改善できる場合もあります。
人工透析によるかゆみは、治療が必要な合併症ですので、ぜひ専門医にご相談ください。
日頃から患者さまご自身がかゆみ対策に気をつけることも重要ですが、まずは受診し、かゆみの悩みを担当医に伝えてみましょう。
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