患者さんにとってシャントは、透析を行う上でとても大切な血管です。シャントの状態が悪くなると透析に必要な血液量を確保できず、透析を十分に行うことができません。シャントをいかに適切に管理していくかは、今後の透析ライフの質を高めていくためにも重要なものとなります
シャントトラブルが発生る原因のひとつが、静脈に高い動脈圧がかかることです。動脈は血流量が多いため頑丈にできていますが、静脈は動脈に比べると脆弱(ぜいじゃく)です。
そのため、動脈から早いスピードで血液が静脈へ流れ込んでくることは、静脈にとって大きなストレスに。ストレスに耐えることができず、シャントが狭窄してしまったり、閉塞したりします。
穿刺によるストレスもシャントトラブルの原因のひとつです。通常、血液透析は週に3回行われ、2本の針を穿刺します。繰り返される穿刺は静脈のストレスとなり、シャント狭窄や閉塞を起こします。
透析をしている患者さんは免疫力が低く、感染にかかりやすいと考えられています。シャント感染は穿刺部付近が不衛生な状態やシャント肢のかぶれなど、皮膚トラブルが原因で生じる可能性があり、全身へ感染が広がる可能性もあるため注意が必要です。
静脈は動脈に比べて脆弱であり、動脈から速いスピードで血液が流れ込んでくることで、静脈にとっては大きな負荷となります。そのため、シャントが狭窄したり、閉塞したりすることにつながるのです。また、繰り返される穿刺によるストレスも狭窄や閉塞の原因となります。
シャント狭窄・閉塞を起こすと透析中に痛みが生じたり、シャント音の変化やシャントの見た目が変化することも。狭窄や閉塞が起きて長い時間が経過してしまうと、カテーテルを使った血管を広げる治療が困難となってしまいます。そのため、なるべく早めに見つけて治療につなげることが重要です。
同じ部位を頻回に穿刺したり、シャントを不潔にしたりすると感染の原因となります。シャントが感染していると痛みや赤み、腫れを生じ、場合によっては膿が出るケースも。
シャント感染が起きた場合はシャントを早く閉じないと大出血や、全身に感染を広げてしまう可能性があります。人工血管の場合、一部あるいはすべてを取り出す必要も。シャントに赤みや痛み・違和感がある場合は、早めに医師や看護師に相談しましょう。
シャントに狭い部位があるとその手前に生じやすいシャント瘤。また、同じ部位を穿刺し続けることで起こります。穿刺の失敗により内出血を起こすことで血管が狭くなることにもつながるので、瘤を形成させる要因になってしまうのです。
大きい瘤は破裂の危険もあり、瘤の切除が必要となる場合があります。治療の目安は瘤にテカテカと光沢が出てきた、短期間でサイズが大きくなった、美容的に気になるなどです。治療法は、瘤をとってすぐ上にシャントを作り直す方法となります。外来でも治療は可能ですが、症状によっては入院することもあるので注意しましょう。
毎日観察することで、異変にいち早く気づくことができます。シャントの音や赤み・痛みなど、シャントに普段と違う様子はないか、見て・聞いて・触ってみることが大切です。
シャントを触ると、「ザーザー」「ゴーゴー」と血液の流れを感じ、これを「スリル」と言います。シャントの状態が悪くなると、スリルも弱くなるのが特徴です。
血管にそって聴診器を当てると、「ザーザー」と連続した音が聞こえます。血流が弱くなると音も弱くなり、「ヒューヒュー」といった高い音や「ザッザッ」といった拍動音に。
少し痛みを感じる、スリルが弱い気がする、シャント音がいつもと違う、などの普段とと違う変化があるときは、早めに透析をしている医療施設に相談しましょう。
シャントにストレスをかけない自己管理が重要となります。
シャント側で重い荷物を持つ、バッグをぶら下げるなどの圧力はシャント血流が阻害されて、血栓ができやすくなりシャント閉塞の誘引となります。
シャントはぶつけないようにしましょう。透析患者さんは、ヘパリンなどの抗凝固剤を使用しているため、出血しやすい状態となっています。
血管への負担を軽減するために、針を刺す場所は毎回変えましょう。人工血管の場合は特に閉塞しやすく、自己修復も困難なため、注意が必要となります。
透析を受けた日は、お風呂には入らないようにしましょう。肌の乾燥がすすむと痒みを生じ、掻いて傷ができることで感染の誘因となります。保湿をしっかり行い、痒みがひどい場合は医師に相談してください。
透析患者さんにとって、シャントは透析を行っていく上で大切なものです。シャントの状態が悪くなってしまうと、十分な透析を行うことができず、透析の質が落ちてしまいます。透析を質の良いものにするためにも、適切なシャント管理が重要です。シャントのトラブルを早期発見・早期治療できるよう、大事に管理していきましょう。
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