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血管石灰化

人工透析の合併症のひとつである「血管の石灰化」についてご存じでしょうか。血管の石灰化とは血管内の中膜に骨ができてしまう症状ですが、動脈硬化を引き起こし、心不全や心筋梗塞などに至る可能性があります。心不全といえば透析患者の死亡原因の多くを占めていますから、透析患者にとって血管の石灰化は決して無視できない存在でしょう。そこで、なぜ血管が石灰化してしまうのか、石灰化を防ぐためにどのような対策がとれるのかを調べました。

血管の石灰化の原因(理由)

血中のリン濃度(カルシウム濃度)の上昇

血管が石灰化してしまう原因として、「血中のリン濃度が上昇する」ことが挙げられます。
リンは骨や歯を構成する体にとって必要な成分ですが、通常は体内で不必要なリンは尿として排出されます。腎臓が正常に機能していれば1日600mgほどが排出され、リン濃度のバランスが保たれる仕組みです。

しかし透析を受けている場合、透析によって排出できるリンの量は1日あたり400mgほど。透析1回あたりのリン排出量は1,000mgほどですが、1日あたりに換算すると健常者ほどリンを排出できていないのです。 リンが排出しきらないことで体内に蓄積してしまうと、異所性石灰化がおこります。つまり血管や心臓の弁、肺など本来石灰化しないはずの部位に石灰が沈着してしまうのです。

カルシウムが多くても石灰化リスクが上昇

また、リン濃度の上昇だけではなく「カルシウム濃度の上昇」も血管の石灰化のリスクを高めます。というのも、石灰化のなりやすさはリンとカルシウムの値の“かけ算”によって決まるからです。そのためリン濃度だけではなくカルシウム濃度も上昇させないことが大切です。

悪化することで起こる続発性副甲状腺機能亢進症

続発性副甲状腺機能亢進症とは、骨がもろくなり骨や間接に痛みが生じる症状です。原因は副甲状腺ホルモンが産生されることですが、この症状は血中のリンとカルシウムのバランスが崩れることで起こります。リンが高くなってカルシウムが低値になると、副甲状腺ホルモンが増加し、副甲状腺を刺激。その結果血中カルシウム濃度は改善されるものの、骨密度の減少や異所性石灰化、また心臓弁膜症などを引き起こしてしまうのです。

血管の石灰化が進行した場合

動脈硬化や脳梗塞・心筋梗塞が発症

血管が石灰化すると、まず血管が硬くなって動脈硬化を引き起こします。腎機能が正常な方の場合、動脈硬化の原因は血管の内側にコレステロールや脂肪が付着することが多いのですが、透析患者の場合は血管の石灰化が主な原因といわれています。

透析患者の体内のリンやカルシウムのバランスが崩れると、血管が石灰化して硬くなります。硬くなった血管は伸縮性に欠け、血圧の調整が難しくなり、血圧が急に上がったり下がったりすることで血管がボロボロになってしまうのです。そうして脆くなった血管は詰まりやすくなり、その結果心不全や心筋梗塞のリスクをぐんと上げてしまいます。

血管の石灰化の予防

食事を工夫する

透析患者にとってリスクの高い「血管の石灰化」は、血中のリン濃度が高まることで引き起こされると紹介しました。つまり十分なリン排出が難しい透析患者にとって、血管の石灰化を防ぐためには「リンを摂りすぎない」ことが大切です。毎日摂取するリンの量を3.5~6.0mg/dlに抑えましょう。食事で摂取するリンの量をコントロールすることで、透析治療でも取り除ける量になります。透析治療で不必要なリンを取り除ければ、血管の石灰化などの合併症リスクを下げることができるのです。

リンを多く含む食べ物

リンが多い食べ物として、米、タンパク質の多い肉や魚・卵・乳製品などが挙げられます。またカステラやせんべい、アイスクリームや豆類、プリンなどの間食にもリンは多く含まれているため注意が必要です。ただし肉や魚、卵などを全く摂らないとタンパク質が不足してしまいます。全く摂らないようにするのではなく、摂りすぎないようバランスの良い食事が大切です。

リン吸着薬を活用する

人工透析の合併症を防ぐために「リンの摂取量を減らす」ことは大切ですが、そのほかにも「摂取したリンを体内に残さないようにする」という方法もあります。リン吸着薬を服用することで吸着薬の成分がリンと結びつき、体内で吸収されずに便として排出できます。ただしリン吸着薬は重度の便秘を引き起こす副作用があるため、服用によって便秘になった場合にはすみやかに医師に相談することが大切です。

まとめ

人工透析は機能しなくなった腎機能に代わる重要な治療ですが、合併症のリスクを忘れてはなりません。とくに血管の石灰化は動脈硬化や心不全、心筋梗塞を引き起こすため、注意して生活を送ることが大切です。まずは食事で摂取するリンの量をコントロールしましょう。

また、血管の石灰化を引き起こす高リン血症は自覚症状がほとんどなく、自分ではわかりづらいこともあります。そのため医師へこまめに相談することが大切といえるでしょう。

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