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糖尿病腎症の原因・症状・治療法

ここでは、糖尿病腎症の原因や症状、検査法、治療法などについて、網羅的に解説します。糖尿病腎症は、人工透析治療にいたる第一位の原因疾患です。

糖尿病腎症とは

糖尿病腎症とは、糖尿病を原因として発症する腎機能不全のこと。腎機能が低下する原因には、ほかにも慢性糸球体腎炎や腎硬化症、ネフローゼ症候群など、いくつかの種類がありますが、これら腎機能不全の原因として最も多く見られるものが糖尿病です。

人工透析患者の原因の第一位は糖尿病腎症

全国腎臓病協議会等の報告によると、2015年末の時点で、人工透析を受けている国内の患者数は324,986人。年間で約5,000名のペースで人工透析患者が増加しているとの試算があるため、2020年末には35万人程度に達する見込みです。
一方で、人工透析を受けるにいたった疾患の原因の第一が糖尿病腎症。患者の総数の38.8%が、糖尿病腎症を原因に慢性腎不全を発症し、人工透析を受けるにいたっています。
ちなみに、2016年の単年で人工透析を開始した患者のうち、約43.2%が糖尿病腎症を原因としています。近年の生活習慣の欧米化などを背景に、糖尿病を原因とした人工透析患者の比率が徐々に増えている状況と言えるでしょう。

日本人の成人の8人に1人が人工透析予備軍

原因が糖尿病であるか否かにかかわらず、日本では慢性腎臓病の患者が年々増加していると言われています。2018年現在の推算では、慢性腎臓病と診断されうる日本人の数は約1300万人。日本人の成人のうち、実に8人に1人が慢性腎臓病を患っていると考えられています。
慢性腎臓病が進行すると、やがて人工透析の導入が検討されます。上で触れたとおり、人工透析の原因の第一位は糖尿病腎症を経由した慢性腎不全。人工透析予備軍と考えられる人は、食習慣や運動習慣の見直しなどを通じ、生活習慣病の予防に努めるようにしたいものです。

糖尿病腎症の原因

糖尿病腎症の最大の原因は、高血糖(糖尿病)による毛細血管の障害です。
高血糖の状態が長く続くと、全身の血管で動脈硬化が進行します。やがて動脈硬化は、腎臓にある毛細血管の中でも発生。腎臓への血流が悪くなり、腎臓本来の働きである老廃物のろ過が正常に行えなくなります。これが糖尿病腎症と言われる状態です。

腎臓の糸球体における血流悪化が主な原因

腎臓は、糸球体と呼ばれる毛細血管の塊が凝縮されている臓器です。左右2つの腎臓には、この糸球体が計100万個ほど存在。腎臓における老廃物ろ過の機能は、この糸球体が正常に働くことにより発揮されています。
ところが高血糖(糖尿病)の状態が長く続くと、糸球体の中の微細な血管に動脈硬化が発生。その結果、腎臓に十分な血液が運ばれなくなり、老廃物のろ過機能が低下します。すなわち糖尿病腎症です。

高血圧や肥満などの生活習慣病も症状を進行させる要因

糖尿病腎症の主要な原因は高血糖ですが、ほかにも症状を進行させる要因として、高血圧・肥満・脂質異常症などが挙げられます。いわゆる生活習慣病と総称される一連の症状です。
生活習慣病は、動脈硬化を進行させる主要な要因とされています。糖尿病腎症の直接的な原因は糸球体の動脈硬化なので、これを悪化させる生活習慣病は好ましくありません。糖尿病腎症の予防・改善のためには、血糖コントロールと併せて、生活習慣病の改善を図る必要があります。

糖尿病と腎臓病

糖尿病を発症すると、さまざまな合併症のリスクが上がります。それら合併症の中でも特に頻発し、かつ重症化する恐れがある3つの症状が「糖尿病の三大合併症」。三大合併症のうちの一つが、糖尿病腎症です。

糖尿病の三大合併症とは

糖尿病腎炎を鳥瞰的に理解するために、糖尿病の三大合併症について簡単に確認しておきましょう。

1.糖尿病腎症

腎臓にある微細な血管の血流悪化により、腎機能が低下する症状。症状が進行すると、やがては透析治療や腎移植を受けない限り生命を維持することができなくなります。

2.糖尿病網膜症

目の網膜にある微細な血管の血流悪化により、徐々に視力がむしばまれていく症状のこと。糖尿病の患者の中には失明する人もいますが、その原因が、糖尿病網膜症です。

3.糖尿病神経障害

手足の神経に異常が生じ、しびれや痛みなどを自覚する症状。症状が進行し、足の切断を余儀なくされる場合もあります。原因には諸説ありますが、そのうちの一つが、毛細血管における血流の悪化です。

三大合併症のすべてが糖尿病による血流障害と関連

上記のとおり、糖尿病の三大合併症は「糖尿病腎症」「糖尿病網膜症」「糖尿病神経障害」です。それぞれ腎臓、眼球、手足と、発症の部位は異なるものの、原因は「微細な血管における血流障害」であることが共通しています。この「微細な血管における血流障害」は、ほかでもない、糖尿病による動脈硬化が原因で発症します。
よって、すでに三大合併症のうちの1つでも発症している患者においては、他の2つの症状も併発する恐れがあるので、迅速に治療を進めなければいけません。

糖尿病腎症の症状・検査・治療方法など

糖尿病腎症の症状

詳しくは後述しますが、糖尿病腎症は、その進行状態に応じて5つの病期に分かれます。それぞれの病期における症状について見てみましょう。

第1期

自覚症状はありません。検査を受けても、糖尿病腎症であることが確認できないことがあります。

第2期

自覚症状はありません。ただし、血圧の上昇が見られる人が多くなります。検査により、糖尿病腎症であることが確実に判明します。

第3期

人により、浮腫(むくみ)が見られることがあります。検査では、たんぱく尿が陽性反応。腎機能が急激に低下し、将来的な人工透析が視野に入ります。

第4期

ネフローゼ症候群を併発し、慢性的な体のむくみ(浮腫)を自覚します。ほかにも、尿毒症の影響による貧血や倦怠感、尿毒症性神経痛による手足の痒み・痛みなどが見られます。

第5期

腎機能がほぼストップし、人工透析を導入することになります。人工透析の副作用として、頭痛や吐き気、出血傾向などを自覚することがあります。
また、人工透析ではなく腎移植を受けた場合、移植後の拒絶反応や、薬物投与による各種の副作用を自覚することがあります。

糖尿病腎症の検査内容

糖尿病腎症は、尿検査と血液検査を通じて診断されます。尿検査では尿中のたんぱく質の量を測定し、血液検査では血中のクレアチニン量を測定します。

尿中たんぱく質の検査

尿検査を通じ、尿中に含まれるアルブミンの量を測定します。アルブミンとはたんぱく質の一種の総称で、卵白に含まれるたんぱく質の約65%がアルブミンです。
腎症を起こしていない患者においては、尿中のアルブミンがほとんど検出されません。よって糖尿病腎症の有無について、尿検査を受けることで非常に正確に診断することができます。

血中クレアチニン量の検査

血液検査を通じ、血中のクレアチニンの量を測定します。クレアチニンとは体内の老廃物の一種で、腎機能が低下することで、その血中濃度が上昇します。

糖尿病腎症の病期分類

糖尿病腎症は、症状の進行状態に応じ、第1期~第5期までに病期に分けられます。それぞれの病期について、日本腎臓学会の定義を表で確認してみましょう。

病期 尿アルブミン値(mg/gCr) あるいは 尿蛋白値(g/gCr) GFR(eGFR) (ml/分/1.73m2)
第1期 (腎症前期) 正常アルブミン尿(30 未満) 30以上
第2期 (早期腎症期) 微量アルブミン尿(30~299) 30以上
第3期 (顕性腎症期) 顕性アルブミン尿(300 以上) あるいは 持続性蛋白尿(0.5以上) 30以上
第4期 (腎不全期) 問わない 30未満
第5期 (透析療法期) 透析療法中


※参照:日本腎臓学会「糖尿病性腎症病期分類の改訂について」(筆者編集)
https://cdn.jsn.or.jp/academicinfo/ckd/dm_nephro.pdf

これら病期のうち、第1期と第2期については、血圧コントロールや血糖コントロールを通じて症状の改善を目指すことが可能です。一方で第3期以降については、治療によって症状の進行を遅らせることはできるものの、改善を目指すことは不可能とされています。
なお、糖尿病腎症の自覚症状が現れるのは第3期から。よって、症状を自覚した段階から治療を始めても、病気の改善を目指すことはできません。健康診断や人間ドック等を通じ、日ごろからご自身の健康状態をチェックすることが大切です。

糖尿病腎症の治療方法

糖尿病腎症の治療法は、「血糖コントロール」「血圧コントロール」「食事療法」の3つが基本となります。

血糖コントロール

第3期までの患者に対しては経口薬、第4期以降の患者に対してはインスリン療法で、空腹時血糖130mg/dL以下、食後2時間後血糖180mg/dL以下、HbA1c7.0% (NGSP) 未満を目標に血糖コントロールを行います。

血圧コントロール

第1~第5までの全病期において、血圧コントロールは必須です。第一選択される降圧剤は、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アンジオテンシンII(AT1)受容体阻害薬(ARB)。これらで効果が不良なときには、Ca拮抗薬、α遮断薬、β遮断薬や利尿薬なども選択肢となります。

食事療法

高血圧を合併している場合には、病期にかかわらず塩分制限を行います。加えて、第1期・第2期の患者においては糖尿病食を基本とし、第3期以降の患者においては低たんぱく食を基本とします。

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